【相談】
今年1月に腎臓ガンが発覚 2月末に摘出手術 その後、肺に転移 胸水が溜まりはじめたが、薬(種類は不明)が効いているようで、水が溜まらなくなった 食欲はないが、総合栄養食のようなものを飲んで何とか体力維持 先週、ゴルフへ(ハーフ廻れた) ADL低下を防ぐためにも体運動を再開したい という方がいらっしゃいました。 軽めのストレッチから提案しようと考えています。 ガン患者さんに対する運動療法で気をつけることはありますか?
78歳 男性
【アドバイス】
がん患者さんへの運動療法は、
倦怠感の軽減、体力維持、ADL(日常生活動作)の維持、QOL(生活の質)の向上などに有効とされています。
一方で、病状や治療内容によっては注意すべき点も多く、
安全面への十分な配慮が必要です。
運動療法は、必ず主治医やリハビリ担当者と相談しながら進めることが大前提となります。
1)運動を始める前に確認したいこと
がん患者さんでは、病状や治療内容によって運動時のリスクが大きく異なります。
運動開始前には、以下の点を確認することが重要です。
① がんの種類・進行度・治療状況
手術後、抗がん剤治療中、放射線治療中など、治療内容によって適切な運動量が変わります。
② 心臓・肺などの合併症の有無
呼吸機能低下、胸水、不整脈、心疾患などがある場合は、運動負荷に注意が必要です。
③ 血液データの確認
貧血、白血球減少、血小板減少などがある場合、疲労・感染・出血リスクが高まります。
④ 骨折リスクの有無
骨転移や高度な骨粗鬆症がある場合、強い負荷や捻り動作で骨折する危険があります。
⑤ 転倒リスクの有無
痛み、しびれ、筋力低下、ふらつきなどがある場合は、安全対策が必要です。
2)運動を控える・中止する目安
以下のような症状がある場合は、無理をせず運動を中止し、医療者へ相談してください。
■ 体調面
発熱、感染症が疑われる症状、強いだるさ、めまい、息切れ、胸痛、強い動悸
■ 治療状況
化学療法の点滴中、治療後24時間以内、血小板低下による出血リスクが高い時
■ 骨転移関連
骨転移部位の強い痛み、新たな骨痛、動作時痛の悪化
3)がん治療ごとの注意点
① 手術後
術後早期は、転倒、血栓、呼吸状態悪化などに注意が必要です。
創部への過度な負荷は避け、痛みや息切れが悪化しない範囲で、段階的に運動強度を上げていきます。
② 化学療法・放射線治療中
抗がん剤や放射線治療中は、骨髄抑制、強い倦怠感、しびれ、皮膚障害などがみられる場合があります。
そのため、軽めの有酸素運動、ストレッチ、軽い体位変換などを中心に行います。
また、皮膚障害やしびれがある部位への過度な摩擦や負担は避けます。
③ 骨転移がある場合
骨転移がある場合は、強い衝撃、捻り動作、重い物を持つ動作などを避ける必要があります。
必要に応じて、装具、杖、歩行補助具などを使用します。
4)安全に運動療法を行うためのポイント
① 「少しきつい」程度から始める
頑張りすぎず、体調をみながら徐々に量や強度を調整します。
② 会話ができる程度を目安にする
「息は弾むが会話はできる」程度の有酸素運動が一つの目安です。
③ 翌日に疲労が残る場合は調整する
翌日まで強い疲労が残る場合は、時間、強度、回数を減らします。
④ 痛みや違和感がある動きは中止する
痛みを我慢して続けることは避けましょう。
⑤ 水分補給・温度管理を行う
脱水や暑さ寒さによる体調悪化を防ぐため、水分補給、室温管理も重要です。
5)抗がん剤治療中に大切な考え方
抗がん剤治療中は、がんそのもの、副作用、栄養状態、倦怠感などによって、日々体調が変化します。
そのため、「やるか・やらないか」ではなく、“その日の体調に合わせて量と強さを調整する”という考え方が推奨されています。
一つの目安として、「次回の治療日にも、自分で起きて通院できる体力と生活動作を保つこと」が重要とされています。
6)比較的安全とされる運動の例
※主治医から特に制限されていないこと、発熱など急性症状がないことが前提です。
① 歩行
会話ができる程度の速さで、短時間から開始します。
② 軽い体操・ストレッチ
関節をゆっくり動かす、呼吸に合わせて身体を伸ばす、肩や股関節周囲を柔らかく保つなどが中心です。
③ 軽い筋力維持運動
筋力トレーニングは自重中心で行います。
例)椅子からの立ち座りつま先立ち軽いスクワット
7)運動時間・頻度の目安
1回10〜20分程度
1日1〜2回程度が一般的な目安です。難しい場合は、5分×数回など、短時間に分けても構いません。
翌日まで強い疲労が残る場合は、時間や強度、回数を調整してください。
まとめ
がん患者さんへの運動療法は、体力維持、ADL低下予防、倦怠感軽減、QOL向上などに役立つ可能性があります。
一方で、骨転移、呼吸状態、貧血、治療副作用などへの十分な配慮が必要です。
「頑張って鍛える」のではなく、“その人らしい生活を維持するための運動”という視点で、安全第一に継続していくことが大切です。